ある天文学者から寄せられた感想

2010.03.08 Monday

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    「孤児たちのルネサンス」 の感想を寄せていただいた中に、ある科学技術館の研究者からのものがありました。お名前は伏せさせていただき、嬉しかったので内容だけを以下に紹介させていただきます。

    拝啓
    このたびは御著書「孤児たちのルネサンス」をご恵贈賜り、ありがとうございました。本日、拝読させていただきました。
     
    私は天文を教えている関係で改暦にちなんでグレゴリオ13世、無限宇宙論にからんでブルーノ、ガリレオ裁判にからんでベラルミーノ枢機卿などの名前には親しみ、彼らの動きはプロテスタントにバチカンが対抗するための運動の中での出来事であったこと、同時代のドイツの天文学者ケプラーはプロテスタントだったため不本意な生涯を送らねばならなかったこと、江戸時代に盛んになった和算の起源がどうもコレジオでの数学の講義にあったらしいこと、などを語り、巷間言われていることとは違い、ガリレオ裁判が必ずしもコペルニクス的宇宙観の弾圧を目的としたわけではなかったことなどを語ってきました。しかし、こうした知識はことごとく書物から得たもので、決して自分で獲得したものではありませんでしたから、そこに何となく後ろめたいものを感じてきました。もっとも、専門が科学の歴史であればそうは言っておれませんが、そうではないことをいいことに目を瞑ってきました。
     
    このたび御著書を拝読し、よくお調べになっておられる様子がわかり、いかに自分の知識が薄っペらなものであったかに改めて気づかされ、頭を一撃されたような思いをしました。そこで、挨拶文を再度読み返してみたところ、「30有余年あたためてきた」とありましたので、納得がいきました。おそらく天正少年使節団やキリシタン弾圧については小説を含む関係書籍がたくさん出ているんだろうとは思いますが、私はこれまでこうした分野に接する機会がありませんので、本書により、おかげさまでたくさんのことを学ぱせていただきました。厚く御礼申し上げます。ストーリーを通すためにフィクションも入っているのでしょうが、大筋では史実をっなぎ合わせて構成されているものと推察致しました。その上、こうして小説・物語の形をとると実に人間味が出て、フィクションのはずなのに妙にリアリティが増してくるのが面白く感じました。
     
    本書で特にありがたかったのは、ブルーノと、南仏・スペイン南部と北の方のパリあたりに漂う雰囲気の違いの背景にある抗争が必ずしもイスラム文化圏との衝突だけではなかったこと、を教えていただいたことでした。そして、今、カトリックはこの時代に似たような危機の中にあるのではないかとの思いを強くしました。当時はプロテスタント運動が、今は、現在の風潮が大きな敵として立ち塞がっているように見えます。もっとも、カトリック離れではなく、宗教離れなのかも知れませんが。本書は宗教に殉じた人たちの物語ですが、現在の宗教の位置を考える上でも大いに役立つのではないかと思いました。
     
    そして、何にも増してありがたかったのは突っかからずに読み終えることができたことです。こなれた文章を書くのは容易ではありません。文章に接するお仕事をされて来られたことがよく分かりました。(中略)本書はきっと大きな評価を受けるのではないかと思います。しかるべき人たちに出会え、正当な評価を得ることができますよう祈っております。

    過分な評価をありがとうございました。
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