「トマス荒木を歩く」 vol.17  マカオへ

2009.12.06 Sunday

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    マカオ サンマロ通り

    6月5日(木)朝7時10分、香港に到着する。
    空港にはベレー帽に自動小銃を抱えた兵士の姿が目立つ。いつもこうなのだろうか、それとも中国返還を目前に控えているから、警戒が厳重なのだろうか?
    大急ぎで入国審査を終えると、フェリー埠頭に行くべくバスに乗り込んだ。その途端、ザーッと雨が降りだしたが5分ぐらいで青空に戻った。と、思ったら、またも空が真っ暗に曇り、しのつくような大雨……。後で知ったことだが、この後、香港は雨の被害で大変だったようだ。マカオで見たテレビのニュース番組で、雨で川のようになった香港の街が映し出されていた。
    しばらく走るとバスは通勤客でいっぱい、バスの外も二階建てバスや乗用車でごったがえしている。香港返還まで後一カ月……でも街は何ら変わった様子もなく、忙しそうに動いている。活気があるというのか、忙しそうと言うのか、香港は本当にザワザワとした喧噪の中にあった。
    小一時間も走ったろうか、いつしか車中も静けさを取り戻し、フェリー埠頭へと到着した頃は乗客もまばらになっていた。
    フェリーの出発時間は9時15分だと言う。5分しかない。エスカレータを駆け上がり、桟橋へ出、走りに走って何とか時間までに滑り込んだ。2等船室に案内されると同時に、出発を知らせるサイレンが鳴った。これから、いよいよマカオへと向かう。
    おさまっていた雨が、またも降り出し、窓の外はみるみる真っ暗な海へと変わっていく。停船していた時は、あんなに揺れていたジェットフェリーだが、走り出すや、嘘のように揺れはなくなっていた。

    マカオに着きフェリーターミナルを一歩出るや、タクシーやペティキャブ(輪タク)の運転手たちが次から次と声をかけてくる。「足があるから歩くよ」「ウォーキング、ウォーキング」と叫びながら自分の脚を叩いて見せる。ペティキャブの若い運転手が笑って手を振ってくれた。
    ところが、いざ歩き始めたものの、その選択が間違いであったことを間もなく思い知らされた。
    ともかく暑い。カラッとした地中海性気候に馴染んだ身体に、マカオの気候は、何とも厳しいものがあった。少し歩いただけで、汗が溢れるように吹き出してくる。その上、道に迷ってしまった。
    若い女学生をつかまえて道を訊ねる。中国語が通じる。これが香港なら、こうはいかない。香港の人にはこちらの話を聞こうとする余裕がないのだろうか。広東語も、英語も話せない人間を完全に無視している。そうとしか思えない。中国語(普通話)を話しても、まるで聞こうとしてくれない。それが、ここマカオでは違う。こちらの言うことをじっくり聞こうとしてくれる。少なくとも、その思いが感じられる。だから広東語でなく、下手な片言の中国語でも通じる。それがうれしい。彼女もじっくり辛抱強く私の言うことを聞いてくれ、汗びっしょりの私の顔を見つめながら、歩くのは無理だからと、バス停まで私を引っ張ってきてくれた。
    しかし、バスは来ない。
    しかたなくタクシーを止め、彼女に礼を言って別れる。
    私はタクシーに乗り込むや、「ハイシー・ポウウークワン(海事博物館)」と行き先を告げた。だが、通じない。ショックだ。慌てて手帳に行き先を書き付け、差し出した。
    …………通じた。
    それから先は、何とか、片言でも話が通じるようになった。
    やがて最初の目的地である「マカオ海事博物館」へと到着した。
    タクシーを降りる時、運転手が笑いながら「留心(気をつけて)」と中国語で声をかけてくれた。 

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