クジラ・イルカ紀行 vol.004 / 沖縄県座間味島「エスコート号」

2018.02.26 Monday

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    (稲崎の見張り台からの情報で、ザトウクジラを目指して進むホエールウォッチングの船団。右端が佐野船長のエスコート号)

     

     座間味でのウォッチングは二年にわたって三度挑戦しましたが、最初の二回はザトウクジラは見ることが出来たものの、遠望するという感じで、クジラを体感するまでには至りませんでした。

     佐野船長の奥さん優美さんは言います。

    「私たちはホエールウォッチングをご案内する上で、座間味を訪れた方々に、ありのままを見てほしいと思っています。ウォッチングの船を出していると、どうしてもお客様に、派手なクジラのアクションを見せてあげたいと思ってしまい無理をしがちになります。

     でもクジラは自然です。いつもいつも、派手な動きに出あえるとは限らないのです。クジラを見られないときだってあります。自然を演出するのでなく、ありのままを見てほしい、ありのままを感じてほしい、そう思って皆様をご案内しています。」

     たしかにホエールウォッチングという時間は、クジラに出会えようが出会えまいが、茫々たる海原に船をはしらせ、太陽を感じ、風を感じ、海を感じ、自然と一体になる、そんな至福感に包まれる。何よりの贅沢な時間だと思います。

     しかしです。僕は、クジラやイルカに取材した「ものがたり」を生み出したいのです。クジラを間近に見、クジラの息吹きを感じ、クジラを体感したいのです。

     こんな次第ですから、佐野船長には無理を言って、三回目のウォッチングのときは、前日が土砂降りの雨で当日もウォッチングがあるかどうかも分からない状態でしたが、佐野船長は、通常のウォッチングよりも早い時間帯に、乗客は僕一人という状態で船を出してくれました。

     乗組員は、佐野船長のほかに「回遊くん」も乗り組んでくれました。

     ところで、僕が彼に「回遊くん」と名付けた経緯ですが、彼は神奈川の出身なんですが、クジラが大好きで、冬はこの座間味へ来てホエールウォッチングの船に乗り組み、シーズンが終わると、ザトウクジラと同じように北の海を目指し沖縄を離れます。

     北の海ってどこかって? 

     ―――― 知床です。

     冬は沖縄の座間味でウォッチング船に乗り組みザトウクジラを追いかけ、夏は知床でヒグマやマッコウクジラのガイドをしているという寸法です。まるでザトウクジラの回遊そのものです。

     これが、僕が彼を「回遊くん」と呼ぶ所以であります。

     

     

     前回、座間味の宿泊事情についてお話ししましたように、座間味島では土地者以外が島で働くのをいやがります。にもかかわらずです。僕が座間味へ来て関わった人たちは、全部が全部と言っていいほど、内地の人間が多いのです。

     見るからに沖縄の人って感じの佐野船長ですが、実は鹿児島県人であります。琉球大学を出て一般会社へ就職しましたが、大学時代、シーカヤックにはまり、会社を辞めて座間味の「ハートランド」というマリンショップで働き出しました。

     

     

     そこへ同じく奥さんの優美さんが、この店の募集に応募してやってきたという次第です。

     優美さんは名古屋でバスガイドのお仕事をされていましたが、慶良間の海にあこがれ、ダイビングの資格を取って座間味に渡ってきたと言います。そこで佐野さんと知り合い結婚の運びとなりました。

     その後、お二人で独立し「ネーチャーランド・カヤックス」のお店を持たれるようになり、ホエールウォッチングのための船「エスコート号」も持つことができるようになったと言います。

     

    (佐野優美さんとネーチャーランド・カヤックス)

     

     優美さんに、ザトウクジラに関し、何かおもしろい話題がないかせっついてみました。

     すると言ってみるものですね。とてつもなく素敵なエピソードをお聞かせいただくことになりました。

     お二人には「あゆみちゃん」というお子さんがおられますが、そのあゆみちゃんが生まれるのと前後して、ご主人の佐野船長が、座間味の海で、ザトウクジラの赤ちゃん誕生を目撃されたのです。

     このクジラの赤ちゃんにも「あゆみ」という名前が付けられました。

     ところで、このクジラの「あゆみちゃん」には大きな特徴がありました。背びれがなくツルンとしているのです。ですから、「あゆみ」が北の海から座間味の海に帰ってくるとすぐに分かるわけです。

     でも、なぜか3年続けて帰らないときがありました。それがひょっこり帰ってきたときは、座間味の人たちが「あゆみが帰ってきた」と大喜びになりました。

     座間味の人たちがザトウクジラに向ける温かい思いが感じられる、本当に素敵なエピソードです。

     

    (ザトククジラの背びれ、あゆみは、この背びれがなく背中がツルンとしている。)

     

     さて座間味にもうひとり、忘れてならない名古屋人がいます。

     座間味ホエールウォッチング協会立ち上げ時からの猛者、大坪弘和さん。彼はクジラ好きが昂じて座間味島に渡り、ここで様々な仕事を経ながら、ホエールウォッチング協会の立ち上げに参画した人物です。座間味ホエールウォッチング協会の責任者であるとともに、日本クジライルカウォッチング協議会の副会長でもあります。

     座間味で出会った人の紹介が終わったところで、次回は、いよいよ僕の座間味での三度目のウォッチングについて話させていただきます。

     

    (ウォッチングを始める前、乗客に注意事項やクジラの解説をする大坪さん)

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