いつも戦いのなか……

2011.05.16 Monday

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    いつも戦いの中にいる。自分ほど穏やかで喧嘩などとは縁遠い人間はいないと思っていた。なのに、最近、血生臭い夢がつきまとう。朝、目が覚めると右手に指が二本しか残っていない。不思議に痛みはなく、なぜか拷問で切り取られたんだと合点しながらも、ひどく気分は動転している。「どうしよう」「どうしたらいい」と、うろたえた揚げ句に目が覚める。
    「そうか、目が覚めたと思っていたのが、まだ夢の中にいたのか」とホッと胸をなで下ろす始末。
    瞑想でもそうだ。本当の自分に心を向けようとしてもなかなか向けられない時、戦いで顔面を割られたのだろう、血みどろの顔が浮かんできたりする。そんな塩梅で、闇出し瞑想の時なども、「他力の反省をしなくっちゃ」と、坐禅をしていた時の自分に心を向ける。鉄眼寺で禅定を組んでいる自分、その鉄眼寺の様子、指導してもらっていた鈴木龍珠禅師の様子等をイメージしようとするのだが、なかなか心が向かない。それはそれなりに苦しくはあるのだが、ボーっとしていて何かピンぼけの状態……。それがいきなり、グイと腕を掴まれたかと思うと、「おまえのいる場所はここだ!」と、いきなり戦場の真っ直中に連れて行かれる。
    実際に声が聞こえたわけではないだろうが、でも表現しようとすると、やはり聞こえたとしか言いようがない。
    その途端、たちまち周りの声が、戦場の喧噪に変わる。
    断末魔のうめき声、雄叫び、罵声……回りで闇出し瞑想をする人の腕が、顔や首筋や胸に、次から次と当たってくる。その度に刃をたたきつけられたようになり、返って、気を引き締め冷静になろうという思いが働く。でも、叫び声が耳について離れない。血みどろの顔、絶叫する口、あれは敵だろうか、味方なのか……何が何か分からなくなり、自分自身が回りの叫び声の一部となってしまう。

    今回(舘山寺)でのセミナーでも、キリスト教に向けようと、かつてインタビューした「二十六聖人記念館」のディエゴ・パチェコ神父や、探し回った揚げ句やっと見付けた、大村鈴田のキリシタン牢の様子を思い浮かべたり、果てはイエスそのものに心を向けたりするが、そのどれもが血生臭い争いの中にあった。武器こそ持っていないが、凄絶な戦場の中に自分は立っていた。
    自分の身を犠牲にした、殉教という凄絶な戦い。キリストを肯定させようとする聖戦。キリストを排撃しようとする聖戦。正統・異端をめぐっての凄惨な殺し合い。はたまた宗教と政治権力の確執。
    そのどれにも関わりを持った。
    イエスそのものに対して、ハッキリ言って崇敬の思いはない。「あのバカのせいで……」そんな思いしか出てこない。ただ「キリスト教」と言うことになると、憎しみが募る。叩き潰してやりたい――そんな思いと、懐かしい思いと、妙に不安な思いの中に投げ込まれる。揚げ句は、ウワーッという叫び声になり、すべてを否定する思いへ、すべてを叩き潰してやりたい思いへと広がっていく。
    そんな時、必死でブレーキをかけ、方向を変えようともがく。「その方法が、本当の自分に心を向けることだ」と、必死で思おうとする。そう思うと、今度は、様々な思いが渦となって、懺悔とも、反省とも、後悔とも、時には恨み言まで伴いながら、すべてを巻き込んで自分の中から噴き上がってくる。まるで自分自身が一つの溶鉱炉、いや原子炉になったような感じを抱えながら二度目の闇出し瞑想が終わった。

    自分の奥深くに根付いているものは、争う思いだった。どんな形で現れてきても、自分の苦しみの根本は「争う思い」にあった、そう思えて仕方がない。
    なぜ争うのか。自分を守りたいからだ。自分を認めさせたいからだ。自分を押しつけたいからだ。「これだけは譲れない」という思いがある。ここに触れられたら、ここを責められたら、ここを侵されたら、俺には戦うしかないと、そんな思いがある。そうなったら、勝つことも勿論だが、それより自分が潰れても相手にぶつかっていく、そんな思いのほうが強い。
    そのエネルギーを秘めながら、表面、穏やかそうに日常を送っている自分がいる。今、「これだけは譲れない」、その一点を仕事の中で揺すられ出した。「低予算、少部数出版」への夢。印刷が特定の人のものから解放される。ノートがワープロに変わったように、印刷が便利な事務用品のようになっていく。
    UTAブックならそれができる。UTAブックならそれをやる意味がある。UTAブックこそ、それを真っ先にやるべきだ。そんな思いがある。そんな肉的な夢がある。
    ここを突かれたら、今までどうでもいいと思っていたことまでが、自分の中の「争う思い」を引き出す材料となる。どうやら、これから自分の本当の勉強が始まるのかも知れない。 

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