事務所の庭にジャガイモを植える

2009.10.23 Friday

0

    事務所の庭が荒れている(写真下)ので、耕して植物でも植えようと思った。
    同じ植えるならと思いついたのが、甘藷(サツマイモ)。これなら素人でも失敗はなさそうだし、甘藷には、ある種の思い入れがある。

    耕作前の荒れ放題の庭

    16〜17世紀初頭にかけて、大航海時代の息吹きが日本にも及び、イエズス会をはじめ海外からたくさんの異邦人達が、この国を訪れた。その一人に英国人リチャード・コックスがいる。
    1613年、平戸に開かれたイギリス東インド会社の商館長として赴任した彼は、足かけ10年にわたり日本に滞在し、日本商館不振の責任を負わされバタヴィア(ジャカルタ)から本国へ送還される途中、三檣帆船アン・ローヤル号の中で病没した。

    平戸イギリス商館跡

    そんなコックスのことを調べるべく、平戸へ取材旅行に出かけたことがある。
    そのおり平戸港からバスに乗って河内浦へと出かけた。今は寂れた漁港となっているが、往時はオランダやイギリスの帆船で賑わったところだ。近くに丸山という外国人相手の遊郭跡もある。後のことだが、この丸山が鎖国後、長崎に移り、所謂「丸山遊郭」の起こりとなった。
    その川内浦へ向かう途中、千里ヶ浜という美しい海岸線を通る。ここには近松門左衛門の「国姓爺合戦」で有名となった日中混血の英雄「鄭成功」が生まれたという「児誕石」がある。母親である田川松が、この場所で産気づき、後の鄭成功となる田川福松を産み落としたというのである。そういえば「松」さんと言えば、コックスの日本人妻も、彼がマティンガと呼んだ「松」さんだった。

    平戸千里が浜

    川内浦から平戸への帰り道、丸山から千里ヶ浜(写真上)へと歩いたが、その千里ヶ浜の裏の山手に「リチャード・コックス甘藷栽培の地」と伝えられる所がある。かのウイリアム・アダムス(三浦按針)が1615年、琉球から持ち帰ったものを、コックスがこの地で栽培を始めたのだという。コックス日記1615年6月19日の条に言う。
    「今日庭づくりして、甘藷を植えた。苗は琉球から持ってきたもので、日本に植えたのはこれが初めてである。庭づくりに毎年1テイ、即ち5シリング払わなければならない」と。(皆川三郎 訳)
    以来、コックスの庭園づくりは平戸では有名となった。寺小屋の主人をはじめ平戸藩の家老や僧侶、中国人ら、彼を知る様々な人たちが、彼のために色々な苗木を贈った。みかん、桃、いちじく、ぶどう等々。たちまちコックスの庭園は豊かなものになったという。
    コックスの人柄が窺えるようでおもしろい。
    コックス甘藷栽培の地

    このとき調べたことは、「平戸とリチャード・コックス」というタイトルで、新人物往来社「歴史研究」に発表したが、そんなことを思い出し、庭いじりしようと思い立ったとき、どうしても「甘藷」を植えたくなったという次第だ。

    ところが……である。サツマイモの植え付け時期は5月〜6月だという。思い立ったのは9月! 時期的にサツマイモは諦めざるを得ない。では何を植えようかと調べたところ……秋植のジャガイモがあった。ジャガイモならピッタリだ。育てやすい上に、コックスともつながる。そもそもジャガイモの名前の起こりは、やはりこの時代、バタヴィア、いわゆるジャガタラ(ジャカルタ)からもたらされた「芋」という意味でジャガイモと呼ばれるようになった。イギリスの日本貿易の拠点がバタヴィアであることを考えると、ジャガイモにこだわっても故ないことではないだろう。

    「きーめたッ!」とばかり種芋探しを始めるが、どこのホームセンターでも売り切れて今後入荷する予定はないという。諦めきれず、詳しい人に訊ねると、元気そうな芋を選んで、適当な大きさに切り、切り口に灰をまぶしたうえで二〜三日、日陰で干して種芋として使えば良いと教えてくれた。そうかと合点したものの、「灰」がない。子どもの頃は「灰」など、どこの家にでもあったものだが、いざとなるとこれが見つからない。やむなく切り口を干すだけでチャレンジすることとなった。

    耕作を開始する

    土壌の酸性土をチェック

    2009年9月14日、土のペーハーを測り、石灰を混ぜたり、肥料を混ぜ込んだりしながら、なんとか2畝を耕し、9月16日には種芋の植え付けへと漕ぎ着けた。
    続いてリンゴの木と柿ノ木を植え、さらに花壇づくりに挑むことになるが、これはまたの機会に……。

    それから毎日、事務所へ出勤して最初にする仕事は、ジャガイモと九条葱(ジャガイモと一緒に植えることにした)への水やり。こうして10月の2週目を迎えた頃、待望のジャガイモの芽が顔を出した。以来、ジャガイモはメキメキと成長し、参考書にある「芽かき」の適期を迎えてはいるのだが、可愛くて、なかなか勢いのよい芽を残して他を抜くなどということが出来ないでいる。

    ジャガイモの発芽

    コメント
    コメントする
    トラックバック
    この記事のトラックバックURL