電子出版の行方

2010.12.31 Friday

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    この年も終わり近くになって、まるで滑り込むかのようにシャープの「ガラパゴス」、ソニーの「リーダー」、ドコモの「ギャラクシー」が発売になった。
    文章をリーダーに表示するためのフォーマットだが、アイパッドがEPUBという世界標準ともいえるフォーマットを採用しているのに対し、シャープやソニーはXMDFという独自に開発したファーマットを採用している。これはEPUBが日本語特有の縦書きやルビ機能をカバーしていないためだが、それぞれが独自フォーマットを開発しているため互換性がない。アイパッドで買ったEPUB対応の本は、ガラパゴスやソニーのリーダーで読むことが出来ない。
    本を出版するということは、誰でもが活字という媒体を使って「本」を読めるようにする、いわば普遍化、標準化の過程ではないのだろうか。
    中世、聖書は、聖職者だけが読めるもので、そのためラテン語という世界に留め置かれ、聖職者以外が、聖書を読んだり書き写したりすると、火あぶりになりかねなかった。
    聖書の例は極端に過ぎるかも知れないが、印刷術が発明されるまでは、本は一部の特権階級のものでしかなかった。
    印刷術の発明は、知識、思想、文化等々、今まで特別とされたものを、一般的なもの、誰にでも手の届くものに置き換えるいわば「革命」ともいえるものであった。それは弛まざる普遍化、標準化の道筋のように見える。

    電子出版は、それをさらに押し進めるものでなければならない筈だ。印刷製本を通してのみ達成できる出版文化は、今や行き詰まり、大きな曲がり角に来ている。
    それを独自フォーマットという閉鎖的な環境に置く商業主義にはうんざりする。

    そんなことを思っていた矢先、上記のような新聞記事が目に飛び込んできた。毎日新聞、2010年12月29日(水)朝刊の1面の記事だ。写真では読みづらいと思うので、以下に、その全文を記しておくことにする。


    米電子書籍 縦書き対応/世界標準、日本普及に道/EPUB

    米電子書籍標準化団体「国際電子出版フォーラム(IDPF)」の電子書籍の閲覧方式「EPUB(イーパブ)」が来年5月、日本語に正式対応することが28日、分かった。米アップルが採用するなど海外で事実上の世界標準となっているが、日本語などの縦書きを想定しておらず、国内では普及していなかった。イーパブが日本語対応することで、国内の出版社や電子書籍端末のメーカーが開発にかかる時間や費用を大幅に抑えられるため、電子書籍の爆発的な普及に道を開くことになる。
    日本電子出版協会が今年4月、日本語対応を提案。その後、IDPFから内諾を得た。日本電子出版協会は技術者を派遣し、日本語対応のためのプログラム作成に協力している。来年5月に完成予定のイーパブ3・0は、日本語の縦書きや句読点の禁則処理、ルビ表記などに対応する。同じく縦書きの中国語のほか、右から左へ書くアラビア語やヘブライ語にも対応する。
    米国の電子書籍市場は、米アマゾンの「キンドル」が火付け役となり急成長。米アマゾンは今年7月、電子書籍の販売数が紙のハードカバーを上回ったと発表した。キンドルや米アップルの「iPad」(アイパッド)など電子書籍端末は米国で累計900万台売れ、10年の電子書籍市場は前年比3倍超との試算もある。iPadが採用したのがイーパブだ。
    一方、日本国内はシャープが開発した「XMDF」や日本企業ボイジャーの「ドットブック」など複数が混在している。互換性がないため、出版社はそれぞれの方式で書籍のデジタル化を進めなければならなかった。
    また、国内の大手家電メーカーや書店、携帯電話会社も独自の提携戦略を展開。シャープはカルチュア・コンビニエンス・クラブ、ソニーはKDDI、NTTドコモは大日本印刷と提携。このほか、NECビッグローーブも対応端末を発売し、紀伊国屋書店がパソコン向け電子書籍の販売を姶めたものの、規格は統一されていない。このため、国内の太手出版社や印刷会社が書籍のデジタル化を容易にする統一規格づくりに乗り出していた。【宇都宮裕一、南敦子】

    はずかしながら、電子図書に関しては、その考え方からして、日本は遠くアメリカにおよばない。電子図書の普及については、フォーマットの標準化が最大の課題であり、いたずらに独自フォーマットの開発で我が身をかばおうとするのは筋が違うように感じる。次いでの課題が、どれだけ格安で質の良いリーダーが提供できるかということになるだろう。
    iPadに続いて、シャープのガラパゴス、ソニーのリーダー発売は、出版の新しい未来が開けると感じた人たちの多くを、少なからず失望させた。

    しかし来年こそは、日本でも、新しい電子書籍の道が開けるような、この記事のおかげで、そんな期待を感じさせる年末となった。


     

    コメント
    メールの文字化けの件ですが、iPadでは日本語がUTF-8というフォーマットで送られてるのかも知れません。
    元々日本語のメールはISO-2022-JPというフォーマットでやり取りされてきたのですが、最近は世界標準?(基本的にどんな言語でも扱える)のUTF-8になってきつつあります。
    古いメーラーがUTF-8を認識できれば文字化けせずに読めるかも知れません。
    • by 読者
    • 2011/01/10 11:45 PM
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