金沢寄り道出張/ No.1 金沢職人大学校・市民芸術村

2010.09.20 Monday

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                   (金沢職人大学・市民芸術村 校門付近)

    昨日金沢へ着き、今日は朝から書店営業で金沢市内や小松方面を回った。
    その途中、様々な寄り道をしたが、営業を終えてホテルへ帰り着いてみると、その寄り道を記録したカメラがない。どこへ落としたか、どこへ忘れたかと思っていると、小松で車に乗せていただいた読者の方から携帯に電話が入った。「車にカメラを忘れているよ」って……。
    とりあえずは一安心だが、ブログの方は画像なしでご勘弁のほどを(9月中旬になってカメラが帰ってきたので、写真だけを追加した)。

    ホテルを9時前に出発。最初の「うつのみや書店柿木畠本店」 へ向かうが、約束は10時半、暑いがブラブラ歩いていくことにする。途中、おもしろそうなところがあれば寄り道しながら向かうことにした。
    ホテルのある六枚町から三社を経て元車の交差点へ出る。予定はこの元車の交差点を左折し、永町西の武家屋敷を抜け香林坊へ出るはずだった。
    ところが、元車の交差点でおもしろい案内板を見つけた。「金沢職人大学校・金沢市民芸術村 歩いて10分」という標識だ。標識の地図を見れば、これから向かおうとしている香林坊とは逆方向。ブラブラ歩くには日差しが強すぎる。と言ってタクシーすら走っていない。「あきらめるか」と思ったが、どんなところだろうと気になり出すと、たまらない。いったん左折した交差点を、気が付けば逆戻りし、反対方向へスタスタ歩き出している始末。好奇心を抑えるどころか、この好奇心があるから楽しいなどと思っている自分がいる。
    しかし、暑い。たまらなく暑い。汗が噴き出してくる感じだ。案内板どおり10分ばかり歩くと、JRの線路にぶつかり、その下を洒落た地下道が走っている。この地下道を抜けたところに「金沢職人大学校・金沢市民芸術村 右50m」の標識がさりげなく立っている。地下道から、この標識がちょうど良い配置で見えるようになっており、地下道のたたずまいと相まって、「なかなか洒落た演出だ」と感心することしきり。
    到着した金沢職人大学校・市民芸術村は、憩いの広場、芝生広場と、4万平方メートルを超える広場を抱えた巨大な施設で、しかも、その隅々にまで洗練された気配りが施されている。煉瓦造りの建造物と芝生広場の境界を人工の川が流れ、通路は板張りで、その川に沿うように、あるいはその川を渡って進めるようになっている。広大な芝生広場には、いくつもの噴水が水を吐き出し、芝生に水をやるばかりか、それがひんやりした風を運んでくれ、自然と汗も引いていく。まさに癒しの空間という言葉がぴったしとくるところだ。外の暑さも、ここまでは届かないのだろうか!?



    市民芸術村の一角では、金沢美術大学の学生たちが、作品展の準備(右写真)に余念がない。その学生たちに職員の若い男性が、会場の説明だろうか、優しげに話しかけている。
    その男性職員に「通りがけの者ですが、ここはどういった施設なのですか」と尋ねてみた。
    彼の丁寧な説明によると、ここは金沢市が運営する施設で、市民芸術村は主に演劇や音楽のリハーサルに使われる施設だという。そのほか、常設ではないが、工芸教室や陶芸教室なども企画されることもあるという。これに対し、職人大学は、金沢の伝統工芸を後世に残すための教育施設だという。ただし誰でも入学できる施設ではなく、現役でその仕事に従事している職人さんで、しかも、業種ごとにそれぞれの組合から推薦された者だけが入学できるのだという。
    さらに詳しく知りたいというと、事務室を教えていただき、そこで「金沢職人大学校のパンフレットと「修復選考科要項」の二つの資料を頂戴した。
    これによると、運営基本方針のトップには「基本的な技術を既有する中堅の職人を対象とする高度な技術向上のための研修と情報交換の場とするとともに、市民への公開を意図した匠の技に関する資料の収集、調査、研究を行う」ということが掲げられており、大きく本科と修復選考科に分けられ、本歌には「石工科」「瓦科」「左官科」「造園科」「大工科」「畳科」「建具科」「板金科」「表具科」の科目があり、この本科課程をを修めた者が、修復選考科に進むのだという。
    そこで「修復選考科要項」により、その具体的な内容を見てみると、「1,修理・復元の基礎的な考え方」が必修科目で34時間、「2,環境計画・文化財保存科学などの講座」が必修科目で20時間、「3,建築の歴史と住まいに関する講座」がやはり必修科目で26時間、「4,調査法の基礎講義と事例研修」必修84時間、「5,実測・製図などの講座」必修28時間、「6,工法知識と修復実習の講座」必修262時間、「7,見学研修・自主研修として」34時間、「8,特別講座として」22時間、合計履修単位時間数510時間となる。


                         (金沢職人大学の校舎)

    こうしてカリキュラムを眺めていると、京都に次いで文化財の多い金沢市。その文化財保護に関する執念のようなものがが感じられるのではないだろうか。
    中国と台湾にある、二つになった「故宮博物院」の文物。これら文物が、第2次大戦の戦火をいかに生き延びてきたか、その秘話を知るとき、文物自体が自らを守ってきたとしか思えないエピソードを聞かされる。空襲があるたびに、いつも意図せず、その寸前に文物の疎開が繰り返されてきたのだという。いただいた資料を見ながら、そんなことを思い出し、金沢の文化財も、ただ単に金沢市が保護に力を入れているという見方以外に、文化財自体の意志が回りを動かしているのでは……そんな思いにさえ捕らわれる。


            (金沢職人大学・金沢市民芸術村の広大な運動場というか公園部分)
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