DTP Booster014に参加 vol.1「電子出版がやってきた ヤァヤァヤァ!」

2010.06.21 Monday

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    小木昌樹さん01.jpgセミナーの一番手は、電子出版の全体像ということで、毎日コミュニケーションズの編集長小木昌樹さんが「電子出版がやってきた ヤァヤァヤァ!」と題して話された。
    小木さんは、90年代初めの美術雑誌編集者時代にDTPと出会い、1999年に『DTPWORLD』編集長に就任。その後、2006年に(株)毎日コミュニケーションズより『+DESIGNING』を創刊し、編集長となった。
    開口一番、「今日は出版関係、編集関係の方が大勢お見えなので、この数字は御存じなのだと思うのですが……」と断ったうえで、出版売上高の推移をグラフ化したものが提示された。

    DTP_BoosTer出版売上高の推移.jpg

    黄色の線が書籍、青が雑誌、紫がその合計値というわけ。1996年から2009年にかけてのデータだが、1996年をピークに売り上げはどんどん下がり続け、2009年の合計値が1兆9356億円 と2兆を割っている。これは21年ぶりの数字、つまり出版業界が21年前の状態に戻ったということになる。

    DTP_BoosTer発行部数の推移.jpg

    続いて発行点数・部数の推移が表示される。黄色い線が書籍の出版点数を表しており、蒼い線は雑誌の発行点数、紫の線は、その雑誌の発行部数を表している。これは1996年から2009年までのデータで、1995年時点を「100」とした場合、書籍は2009年時点で「125」と、25%も出版点数が増えている。
    書籍に関して言えば、出版点数は増えているのに、売上高は下がっている。つまり一点当たりの売上高が低下しているということになるわけです。雑誌も発行点数は増えているのに部数は落ちている。つまり一誌あたりの部数はめちゃくちゃ落ちていることになります。
    出版というのは元々「他品種少部数」のビジネスモデルなわけです(何万部というベストセラーは別ですが……)。その業界が、今、出版点数は増えているのに、売り上げは極端な落ち込みを見せている。それが、出版業界の今の状況ということになります。
    もう一つ、雑誌ビジネスで大きなウエイトを占める広告も、今非常に厳しい状況にきている。2009年は雑誌広告の売り上げが3,034億円ですが、2008年は4,000億円ぐらいあったわけですから、実は25%ぐらいも一気に落ちている。
    このような状況で、出版社の経営はますます厳しくなっている。つまり、これまでの出版ビジネスは崩壊の危機に瀕しているということが言えると思います。

    話は飛びますが、出版業界は、この20年ぐらいで大きな変革期が一つありました。一つは1990年頃から始まったDTP――デスクトップパブリッシングです。この頃からDTPは全盛期を迎えます。これが出版の第一の変革期になります。
    では何が変わったかというと、ひとつはパソコンを使ったデザイン。次いで組み版の過程が活字による組み版からコンピュータ組み版に変わった。さらには写真がデジタル化し、入稿や校正の通信化がおこった。つまり製作工程でのデジタル化、あくまでも作る側のデジタル化ということであって、書店や読者までを包み込んだ変革ではなかった。いわば読者不在の変革。
    これに対し、2010年になって急速に電子出版という話が起こってきた。
    出版におけるステクホルダー左図は、出版におけるステークホルダーを図表化したものだが、出版社は著者からコンテンツをもらい、それを本という形にして、取り次ぎを経て書店に流し読者へ届ける。これが出版の今までの形、生態系といえる。
    ところが電子出版になったら、この生態系がガランと変わってしまう。まさにこのことを象徴しているのが、今週ニュースになった作家・瀬名秀明さんの事例だ。彼は、自分たちグループで電子書籍「AIR(エアー)」を製作し、直接Appstoreで販売を開始してしまった。これは取り次ぎも書店も、出版社すら通さない。まさに自分たちでコンテンツをつくって、アプリ化してAppstoreで販売し読者と直結するという形を実験的に始めてしまったのだ。
    これがビジネスになるかどうかは別として、電子書籍は、やろうと思えばここまでできるという可能性を示したといえる。コンテンツを持っている人が読者と直結できる、これが電子出版の本質といえる。
    では、出版社や取次店、書店、印刷会社は、これとどう関わっていくのか、真剣に考えていかないと、とんでもないことになっていくだろうと思う。では我々出版に関わる者は何をすべきか……答えはまだ出ていないが、一つ言えるのは、ただ単に紙の置き換えじゃダメなんだということ。電子になったらなったなりの、新たな体験を読者に与えられるものでないとダメだと思う、それができるかできないかが、一つの鍵だと僕は思います。

    以上が、小木さんの講演の要約です。次回は、境祐司さんの「電子出版を理解するための5つのポイント」を復習してみることにします。
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