自炊で電子図書をつくってみる

2011.02.09 Wednesday

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              (断裁機がないので、カッターナイフで根気よく本を解体していく)

                 (ページがバラバラになっているか確認)
    若い人たちのやっている「自炊」ということをやってみた。
    「自炊」と言っても、自分で飯を炊いて食うのではない。書籍を裁断してスキャンし、デジタルデータに変換する行為を「自炊」と言うらしいのだ。
    若い人が「本棚の本を自炊しちゃってさあ」などと言っているのを耳にすることがある。
    なぜ「自炊」というのか?
    一説に、「PCなどに吸い上げる→自吸い→自炊」 となったと、もっともらしいことが言われている。また、ホームレス等への炊き出しをイメージし、本をスキャンしてアップロードすることをも「炊き出し」と呼び、この炊き出しを受ける者は、ただダウンロードするだけのネット乞食だという。こんな説もある。しかし真偽のほどは定かでない。

    ともかく、若い人が言う「自炊」ということを経験しようと思い立った。これも電子図書には違いないのだから。
    それに「本」と「映画」には目がない。一時、たまりにたまった本を処分したことがあるが、いつしかまた「本」が、事務所や我が寝室を浸蝕しつつある。ならばデータ化して残すことを考えるのが賢明ではないか。データ化すれば、「どこに書いてたっけ」とページを探し回ったあげく、「たしか、ココに書いてあったはずなのに」などと悩むこともなくなるわけだ。なにせ検索できるのだから……

    思い立ったが吉日と、早速、本の解体から……。しかし、これには決意が要った。なにせ自他共に認める「本の虫」、本をばらすことに、抵抗感、いや罪悪感さえ感じる。
    ここは思いっきりだ! 男は思いっきりが肝心と、よく切れるカッタナイフを用意し、表紙カバーや帯を外すや、おもむろに背中から3ミリぐらいの処にサシを宛てカッターの刃を滑らせていった。引くこと50回あまり。新書版224ページの本が背中から切り離された。

    記念すべき「自炊第1号」は、ランドール・サトー著「沈没船が教える世界史」。
    一番上の写真は、表紙カバーと表紙と本文の3つに解体された、その「本」である。次は、その解体された「本文」を、まだひっついているところがないか、いくつかに分けチェックする。まだページとページがひっついているところがあれば、それをはがして1枚1枚にし、次ぎにドキュメントスキャナーにかける。
    すると、224ページの本を、読みとる解像度にもよるが、ほんの5分から10分あまりでスキャンを終えてしまう。ドキュメントスキャナー恐るべしである。
    僕の使っているドキュメントスキャナーは、エプソンのES-200。値段も3万円台と手頃で、コンパクトで、一見、炊飯器に似ている?が、その読みとり速度というか炊き上がり時間というか、その速さには驚かされる。「本」を解体するのが嫌で、ベッドスキャナーで1ページ1ページ、影が出ないよう本を押さえつけながらスキャンしていたことを思うと夢のようだ。
    スキャンさえ終われば、後は、そのままPDF化しようが、OCRをかけてテキスト化しようが思いのまま。急ぐ場合は手っ取り早くPDF化し、そのままアイパッドで読むようにしているが、これと思うものは、OCRをかけてテキスト化し、それをさらに、「インデザイン」等の組み版ソフトを使い、自分の好みにあった体裁に仕立て直すことにしている。
    こうすることで、テキスト化の過程で必ずチェックするため、スキャンしっぱなし、本で言うと「積読(つんどく)」ということがなくなる。おまけに自分でページを組んでいくので、自分の読みやすい体裁に組めるし、どこに書いてあったかの見当がつけやすいという利点もある。(検索がかけられるから必要ないといえば必要ないのだが……)

    ところでハードカバー本の解体となると、ちと面倒。厚手の表紙をはずし、カッターで切っていくのだが、裁断機があるわけでなし、手許が狂えば大事な本の版面に傷をつけてしまう。そこで外注で裁断してくれるところがある。安いところで1冊50円〜70円程度で解体してくれるという。
    僕も、今日始めてその存在を知り、利用してみることにした。
    送料込みで20冊まで2000円で解体してくれる。これなら、自分でカッターの刃を本に当てるときの、あの何ともいえない後ろめたさというか、ためらいから解放される。
    あとは仕上がってくるのを待ち、データ化していくだけ。こっちのほうは、どんな体裁に仕上げるのか、どちらかというと楽しい仕事になってくるという寸法だ。

    電子出版の行方

    2010.12.31 Friday

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      この年も終わり近くになって、まるで滑り込むかのようにシャープの「ガラパゴス」、ソニーの「リーダー」、ドコモの「ギャラクシー」が発売になった。
      文章をリーダーに表示するためのフォーマットだが、アイパッドがEPUBという世界標準ともいえるフォーマットを採用しているのに対し、シャープやソニーはXMDFという独自に開発したファーマットを採用している。これはEPUBが日本語特有の縦書きやルビ機能をカバーしていないためだが、それぞれが独自フォーマットを開発しているため互換性がない。アイパッドで買ったEPUB対応の本は、ガラパゴスやソニーのリーダーで読むことが出来ない。
      本を出版するということは、誰でもが活字という媒体を使って「本」を読めるようにする、いわば普遍化、標準化の過程ではないのだろうか。
      中世、聖書は、聖職者だけが読めるもので、そのためラテン語という世界に留め置かれ、聖職者以外が、聖書を読んだり書き写したりすると、火あぶりになりかねなかった。
      聖書の例は極端に過ぎるかも知れないが、印刷術が発明されるまでは、本は一部の特権階級のものでしかなかった。
      印刷術の発明は、知識、思想、文化等々、今まで特別とされたものを、一般的なもの、誰にでも手の届くものに置き換えるいわば「革命」ともいえるものであった。それは弛まざる普遍化、標準化の道筋のように見える。

      電子出版は、それをさらに押し進めるものでなければならない筈だ。印刷製本を通してのみ達成できる出版文化は、今や行き詰まり、大きな曲がり角に来ている。
      それを独自フォーマットという閉鎖的な環境に置く商業主義にはうんざりする。

      そんなことを思っていた矢先、上記のような新聞記事が目に飛び込んできた。毎日新聞、2010年12月29日(水)朝刊の1面の記事だ。写真では読みづらいと思うので、以下に、その全文を記しておくことにする。


      米電子書籍 縦書き対応/世界標準、日本普及に道/EPUB

      米電子書籍標準化団体「国際電子出版フォーラム(IDPF)」の電子書籍の閲覧方式「EPUB(イーパブ)」が来年5月、日本語に正式対応することが28日、分かった。米アップルが採用するなど海外で事実上の世界標準となっているが、日本語などの縦書きを想定しておらず、国内では普及していなかった。イーパブが日本語対応することで、国内の出版社や電子書籍端末のメーカーが開発にかかる時間や費用を大幅に抑えられるため、電子書籍の爆発的な普及に道を開くことになる。
      日本電子出版協会が今年4月、日本語対応を提案。その後、IDPFから内諾を得た。日本電子出版協会は技術者を派遣し、日本語対応のためのプログラム作成に協力している。来年5月に完成予定のイーパブ3・0は、日本語の縦書きや句読点の禁則処理、ルビ表記などに対応する。同じく縦書きの中国語のほか、右から左へ書くアラビア語やヘブライ語にも対応する。
      米国の電子書籍市場は、米アマゾンの「キンドル」が火付け役となり急成長。米アマゾンは今年7月、電子書籍の販売数が紙のハードカバーを上回ったと発表した。キンドルや米アップルの「iPad」(アイパッド)など電子書籍端末は米国で累計900万台売れ、10年の電子書籍市場は前年比3倍超との試算もある。iPadが採用したのがイーパブだ。
      一方、日本国内はシャープが開発した「XMDF」や日本企業ボイジャーの「ドットブック」など複数が混在している。互換性がないため、出版社はそれぞれの方式で書籍のデジタル化を進めなければならなかった。
      また、国内の大手家電メーカーや書店、携帯電話会社も独自の提携戦略を展開。シャープはカルチュア・コンビニエンス・クラブ、ソニーはKDDI、NTTドコモは大日本印刷と提携。このほか、NECビッグローーブも対応端末を発売し、紀伊国屋書店がパソコン向け電子書籍の販売を姶めたものの、規格は統一されていない。このため、国内の太手出版社や印刷会社が書籍のデジタル化を容易にする統一規格づくりに乗り出していた。【宇都宮裕一、南敦子】

      はずかしながら、電子図書に関しては、その考え方からして、日本は遠くアメリカにおよばない。電子図書の普及については、フォーマットの標準化が最大の課題であり、いたずらに独自フォーマットの開発で我が身をかばおうとするのは筋が違うように感じる。次いでの課題が、どれだけ格安で質の良いリーダーが提供できるかということになるだろう。
      iPadに続いて、シャープのガラパゴス、ソニーのリーダー発売は、出版の新しい未来が開けると感じた人たちの多くを、少なからず失望させた。

      しかし来年こそは、日本でも、新しい電子書籍の道が開けるような、この記事のおかげで、そんな期待を感じさせる年末となった。


       

      やぶにらみ 電子ブックリーダー比較「アイパッド」vs「ガラパゴス」

      2010.12.15 Wednesday

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        シャープが、アイパッドへ対抗するべくガラパゴスを発売した。購入前の相談ということでシャープへ問い合わせたり、パンフレット調べてみたが、今ひとつピンとこない。ならばと、梅田のヨドバシカメラへ実物をさわりに出かけることとした。

        右の写真は、正確ではないが、だいたいの大きさ比較にはなると思う。
        一番上がアイパッド、二番目がガラパゴス、三番目がソニーのリーダー。

        外形でみると、アイパッドが、幅189.7mm、高さ242.8mm、重さがWi-Fiモデル680g。
        これに対し、ガラパゴスは、幅177mm、高さ286mm、重さが765g。 

        人づてに、ガラパゴスのほうが、アイパッドより軽いと聞いていたが、逆にアイパッドのほうがやや軽いということになる。
        画面サイズでは、ガラパゴスがワイド版で、アイパッドより縦長になっている。
        この縦長が、僕にとっては、というか、「本」を読むという段になると、どうにも気にくわない。
        縦置きで読書しようとすると、1行が不必要に長くなる。日本文の縦書き表示では、上から下へ読みおろすことになるが、あまりに上下が長くなると、目の動きの許容範囲を超えており、長く読もうとすると不必要に疲れるのだ。では、これを横置きにし、見開き表示にすると、1ページが正方形に近くなり、日本語の組み版に慣れた目には何ともとっつきにくい。いわゆるタイポグラフィーという観点からみると、何とも美しくない。

        これに比べ、アイパッドの縦横比は、横書き図書を読むにしろ、縦書き図書を読むにしろ、紙の本を読む感覚に近い。
        これでは、日本語表示に優れていなければならない日本の製品が、アメリカ製に負けているということになる。事実、そうなっていると思う。映画をダウンロードして観るなら、確かにガラパゴスのワイド画面は魅力だが、こと本を読むリーダーとして見た限りでは、うれしい縦横比とは言えない。
        ページ送りもアイパッドのようなスムーズさがなく、ぎこちない動きになっている。一部分を拡大したときも画面が落ち着くまで、文字のジャギーが目立ち読みにくい。要は、動作に滑らかさがなく、ページが落ち着くまで若干とはいえ待ち時間が生じ、スムーズな読書の流れを妨げるのだ。

        そんなことを考えると、本のリーダーとして見る限り、ガラパゴスは遠くアイパッドにおよばないと言えるのではないだろうか。

        この二つとは別路線を行くのが、ソニーの「リーダー」だ。完全に「本」を読むことに特化したリーダーになっており、「本棚をポケットに」というキャッチフレーズで、6型と5型の2サイズを発売している。アイパッド、ガラパゴスを見た目には、ブラック&ホワイトの画面は地味に写るが、静止画面の文字および画面の美しさは、さすが「eインク」と思わざるを得ない。
        タイポグラフィーの面からも、「本」の形に近い美しさを感じる。ただページ送りの時、静止画面に落ち着くまで、一瞬画面が反転する。慣れるまでは、これが読むリズムを邪魔するが、それもこれから改善されていくのかも知れない。

        最後に、これは読む立場の人からは関係のないことなのだが、ガラパゴスも、ソニーリーダーも、文章とページを表示するフォーマットが、「eパブ」でなく、「xmdf」で作成されている。たしかに、「XMDFは日本語の縦組みの表示機能を保持しており、処理の複雑なルビや縦中横、行末の禁則処理、外字などには対応して」いるということなのだが、電子出版をめざす零細出版者にとっては、やっと「eパブ」が身近になったというのに、またぞろ「xmdf」について勉強しなければならないという、大きな課題を抱えてしまった感じである。
        願わくは、組み版ソフトであるインデザインがこれに対応してくれること。
        つまり、InDesignから自動書きだしを行うことで、紙のレイアウトから、そのままXMDFに変換するコンバータを、無償でInDesignユーザーに提供してもらえればと思う次第である。

        「iPad-zine」へ投稿したら

        2010.07.26 Monday

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          今、電子出版のサイトをいろいろ試して みている最中だ。
          もちろん、多くの人の原稿を預かっているとはいえ、他人の書いたものは著作権の関係があるので試すことは出来ない。結局、自分の書いた原稿で試すことになる。
          そこで、かつて出版した「時を超えて伝えたいこと」を、iPadで読める電子書籍サービス「iPad-zine」へ投稿してみた。

          「iPad-zine」は、PDFのほかePubやテキストでも投稿できるようになっている。まずは「時を超えて……」をPDFで投稿してみた。次いで同じ僕の作品で、「孤児たちのルネサンス」をePubで投稿してみようと、今日「iPad-zine」のサイトを開いてみて驚いた。
          先週アップした「時を超えて伝えたいこと」が、「注目の電子書籍」として、同サイトのトップページに、しかも1番目に出てくる。
          うれしがりのようだが、いつまでトップページに出てくるか分からないので、トップページに紹介されている間にぜひ見てほしいと、このブログに掲載した次第。なおダウンロードは無料なので、興味のある方はダウンロードしてみてください。
          ちなみに「時を超えて……」は「人文・思想」のジャンルに、「孤児たちのルネサンス」は「文学・評論」のジャンルで投稿している。

          iPad-zine のurlは以下の通り。
          http://www.ipad-zine.com/

          「時を超えて伝えたいこと」PR文
          君は、今どこに生きているのだろう。アジアのどこかの国なのか? ヨーロッパ? アメリカ? それとも、また日本なのか?
          でも、君の時代にも、まだ日本という国は存在するのだろうか? 
          返事がないのは分かっているが聞かずにはおれない。
          僕の生まれた国、僕が生きた国、そして大切な人たちと出会った国だ。
          僕は今、日本という国に生きている。
          この地で大事な人と出会い、大事なことを伝えられた。
          「人間は意識だ」ということ、「永遠に存在し続ける意識こそが本当の自分の姿だ」ということ。このことを心で分かり、「肉体」を中心とした生き方を、「意識」を中心に据えた生き方に換えていかない限り、何も変わらないということ。その転換をするためにこそ与えられた人生だということ……。

          ※その後、「時を超えて伝えたいこと」が、「注目の電子書籍」としてiPad-zineのトップを飾ったのは、7月26日まる一日のことだった。翌27日にはトップから姿を消した。ただ「人文・思想」の項目では、まだトップで出てくる。これもいつまで続くやら……。

          「ぶくろぐのパブー」で電子出版に挑戦!

          2010.07.05 Monday

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            我が家にもiPad(アイパッド)が来たので、いろいろと試している最中だが、まずは電子出版の標準フォーマットと目される「ePub」を試してみようと思った。ePubとは電子書籍を作成するための形式の一つで、IDPF(International Digital Publishing Forum)国際電子出版協会により制定された標準形式のこと。アップルのiPadが電子書籍リーダーソフトで対応したことで、がぜん注目を集めていると言う。

            しかし、いきなり「ePub」といっても、それを直接ソフトなしでやれるようなマニアでもないし、何か便利なサイトはないかと思っていると、このブロクを運営しているサイトで、「ぶくろぐのパブー」というサービスサイトがある。「電子書籍の作成・公開・販売がすべてオンラインで完結!」とうたっているもってこいのサイト。ならば、早速試してみようと、昔、雑誌に発表した原稿を、このサイトで電子図書にしてみようとチャレンジしてみた。



            まずはぶくろぐのパブーでユーザー登録を行い、ログインすると上のような画面が現れる。右上に大きな3つのボタンがあり、その一番左端の「+本をつくる」というボタンをクリックする。



            すると「本のタイトル」と「本の概要」を入力する画面となる。ここで「タイトル」、「概要」、どういうジャンルの本か「カテゴリー」を入力する。表紙が必要なら、「表紙画像」をつくって添付する箇所も用意されている。概要を入力する覧の右下に「本を作成する」という緑のボタンがある。これをクリックすると、本の章立てを入力する画面となる。



            上の画面が、章立てを入力する画面。ここに一行毎に「章のタイトル」を入力していく。後は、章毎に編集ボタン(鉛筆のイラストをクリックすると、章の本文を入力する画面が出てくる。



            ここに本文を入力し、必要なら画像も挿入していき、すべての章の入力が完成すれば、「本を公開する」というボタンをクリックすれば完成。そのとき、無料にするのか、有料にするのかも選ぶことが出来る。今回は、テストでやっているのでもちろん無料。
            ただし縦書きは対応していない。すべて横書きでページ組みされるほか、ワープロ文書からペーストする場合、改行に注意する必要がある。1行あきのつもりが、「改行」が「スペース」になって体裁が狂ったりすることもある。後で確認の上、手直ししていかなければならない。

            ぶくろぐでつくった電子図書をiPadで見る。左の写真は、こうしてつくった「電子図書」をiPadで確認するところ。一番上の写真は、iPadのメニュー画面。左端、上から2番目のボタンが「iBooks」のボタン。
            これをクリックすると、2番目の写真のような本棚の画面に変わる。その左端に、いまつくった電子図書の表紙が並べられている。
            これをクリックすると、本の表紙が開き(3番目の写真)、本文が表示される。この写真でも分かるように、指でページをめくるような感じで「本」を読むことが出来る。
            今、写真はビュアーを縦にして見ている状態だが、ビュアーを横に倒すと2ページ見開きの画面に変化する。
            縦位置なら1ページが大きく表示され、横位置にすると、小さく見開きで左右のページが表示される。その際、文字の大きさは変化しないまま、見開き表示になるため、レイアウトも変化する。画像の入れ方によっては、横位置にしたときおかしなレイアウトになることがある。
            確認の上、後で手作業で直していく必要がある。

            それにしても、何とも見やすい。老眼鏡の上にさらに天眼鏡をつかって本を読むこととは、これで「おさらば」できるかも(冗談でなく、広辞苑などを調べるときは、老眼鏡だけでなく天眼鏡も必要なのだ)しれない。

            ともあれ、少なくともこれで誰もが、高い費用をかけなくとも「本」が作れるようになった。確かに今までも、ブログやツイッターなど、インターネット上で、文章を公開することは可能だった。しかし、あくまでも、井戸端会議的だったり、独り言のような「言いっぱなし」ならぬ「書きっぱなし」「書き流し」的な感じは免れなかった。
            ある人が、ネットの文章は「水」。本を書くという行為は、それを「氷」にするということ。そんな表現をされていた。本にする過程で、いったん、自分の中で発酵させ、それを形にしていく。自分を見つめる、あるいは自分の中と対話していくことなしに、それは出来ないことだと思う。

            今までは「本」にするということが特別なことであった。このため「本」を出版することが、人によっては「自己顕示欲」と結びついていたこともあったと思う。
            しかし、これからは「電子出版」の普及で、たくさんの人が「本」を紡ぎ出すという行為を通して、自分と向かいあっていく、そんな時代がやってくるような気がするのだが……。


            ※最後に、iPadを使っての操作を動画でアップしておく。ただし、撮影するのも一人なら、iPadを操作するのも一人。ページを送ろうとしているのに、ページが動かない等々、ぎこちない動きは勘弁していただきたい。




            ぶくろぶのパブー 

            我が家に「iPAD」がやってきた!

            2010.07.03 Saturday

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              今までにも「電子出版」の話は何度か起こっては消えしてきたようだ。 何が邪魔をしたかといえば、日本の流通制度が、まずあげられるが、ついで大きいのが電子図書を読むビュアーの問題だろう。
              まずパソコンだが、これは電子出版を読むビュアーとしては不向き。メールを書いたり読んだりすることには、パソコンは向いているが、いかにノートパソコンが小さくなったとはいえ、パソコンは仕事の感覚が付きまとう。パソコンに向かってくつろいで本を読もうという気にはならない。
              そこで電子図書のリーダーが必要になってくる。かつてソニーやパナソニックが、このリーダーを開発したが、流通制度が弊害となって、それで読める本が限られる上に、貸本のように料金を払ってダウンロードしているのに、期間が来れば消えてしまうという代物だった。出版流通を崩さないようにというか、既存の出版流通機構に気兼ねしての苦肉の策だったようだ。しかし、こんな中途半端なものにユーザーが飛びつくはずもなく、日本で起こりかけた電子出版の灯は、そのまま自然消滅してしまった。

              そして現在、電子出版を読むためのリーダーは、アメリカでヒットし、日本へやってこようとしている。eペーパーの採用で、かなり完成度の高いリーダーが用意されるようになってきたが、ここで起こってくるのが、日本語という壁。
              今、漢字を使っているのは日本と中国。韓国はハングルを採用し、横書き文化に変わってしまった。その中国も、横書きを採用し、いまや縦書きで文章を書くのは、日本一国になってしまった。かたや電子図書を読むためのリーダーは、横書き左綴じに設定されている。どういうことかというと、読書リーダーの場合は、人間が機械に歩み寄るのでなく、機械が人間に歩み寄ろうとしている。つまり紙で読んでいる感覚を機械でも再現しようとしている。指でページをめくるような感覚で、画面を右から左へ指でなぞることでページ送りができるようになっている。ここで注意しないといけないのが、右から左へなぞるというのは、あくまで横書き・左綴じの感覚なのだ。これが縦書き・右綴じだと、左から右へ画面をなぞる感覚となる。アメリカが日本へ電子出版で殴りこみをかけるためには、日本一国のために、このシステムを改良しないといけないことになってくる。

              実は、昨日、我が家に「アイパッド」が到着した。早くから申し込んでいたのだが、超人気商品のため製造がおっつかないのだろう。やっと昨日になって到着した次第。アイパッドは、読書専用の端末機ではなく、ゲームもできる、音楽も聴けるという汎用機だ。本を読むことに特化して作られていない。このため、大きさもB5サイズと少し大きめ。しかしパソコンで文章を読むというストレスは感じさせないし、画面もバックライトのため驚くほどきれい。きれい過ぎるので、文章を長時間読むと、やはり目が疲れる。地味でも、電子ペーパー採用の反射光で読む専用リーダーのほうが、読書のためには優れているだろう。しかし、そのアイパッドでさえ「本」を読む気にさせてくれる。パソコンで読むには、「読むぞーっ」と気合を入れてかからねばならない。それが布団にごろ寝しながらでも読めるし、読書という行為に違和感なく入っていける。そのうえ電子図書ならではの便利さ、紙に比べ文字がすこぶる読みやすいのだ。リーダーを縦にしたとき、一ページ丸ごとが一字一字の文字まで判別できる状態で無理なく視界に捉えられる。「これは読みやすい」と感動した。画面を横にして見開きで読むという手もあるが、老眼の目には、このスタイルがなんとも心地よい。
              しかし、今の時点ではアイパッドにしても、システムとして縦書き・右綴じに対応していないので、作る側(出版社側)でソフトとして対応しないといけない。僕も試しにいくつかの本をPDF形式でアイパッドに登録して読んでみた。PDFをパソコンで見たときに起こるぼんやりした感じはなく、シャープで読みやすい画面になっており、快適に読書を進められる。ところがページを送るのに違和感が付きまとう。縦書きなのに、右から左へページを送っていく。縦書きなのにページ送りが、横書き・左綴じの感覚なのだ。これは画面の見安さに比べ、いい感じとはいえない。

              しかし、この問題はソフトでも対応できるし、システム面でも改良が加えられるだろう。今年秋から年末にかけて、アメリカからも読書リーダーは入ってくるだろうし、日本でも日本語に適したリーダーが開発されると聞いている。そうなれば、読書端末機も安く提供されるようになってくるだろうし、今度こそ電子図書の時代がやってくるように感じられる。少なくとも、老眼鏡が離せなくなった私にとって、アイパッドで本を読む、あの快適さは魅力だ。 

              DTP Booster014に参加 vol.3「成功する電子書籍ビジネス〜ビジネスの立ち位置が天国と地獄を決める〜」

              2010.06.26 Saturday

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                DTP Booster014のトリをつとめたのが田代真人さんだが、その会場で彼の書いた「電子書籍元年−iPad&キンドルで本と出版業界は激変するか?−」が販売されていた。奥付を見ると、2010年5月21日初版発行となっている。出たところだ。また、セミナーでの田代さんの話は非常におもしろかったのだが、時間切れで尻切れトンボになってしまった。もう少ししっかり聞きたいと思い、この本を買うことにした。これが結構おもしろい。
                そこで、この本の内容も引っくるめて、DTP Booster014の最後のセッション「成功する電子書籍ビジネス/ビジネスの立ち位置が天国と地獄を決める」について紹介することにする。

                まず田代氏は、冒頭、会場に集まった人たちに問いかける。
                「電子出版でビジネスを考えている人、手を挙げてください」
                大半が手を挙げる。続いて、「では電子出版を趣味でやろうとしている人?」
                パラパラと手が挙がる。

                セミナー会場風景05.jpg

                すかさず、「実は趣味でやろうとしている人が一番怖いんです。採算を度外視して良いものを作ろうとするからです」と、田代氏は続ける。僕はどちらにも手を挙げなかった。
                「ビジネスか、趣味か、どちらかしかないのか?」と、生来のへそ曲がりが頭をもたげる。
                菊池寛の小説に「恩讐の彼方に」という名作がある。「青の洞門」を開削した僧・禅海の史実に取材した作品だが、では、この禅海さん、洞門を開削して通行料で儲けようというビジネスのためにやったのだろうか。それとも暇つぶしに趣味で洞門を開削したのだろうか。
                どちらでもなかったと思う。「仕事をした」もしくは「仕事をする」というとき、この「仕事」という言葉には、「生活のために金を稼ぐ」という意味あいと、「何かを成し遂げる」という意味あいの二通りの意味があると思う。後者の場合は、それこそ、「稼いだ金をつぎ込んでも……」そんな思いさえ感じられる。(閑話休題)

                このあと、田代さんは「電子出版は儲かる」という幻想を、数字を並べて打ち破りにかかる。

                まずは紙の書籍における売上げとコストの内訳を掲げる。定価1,000円の本が5,000部つくられ、全部が売れた場合、売上げは5,000,000円となる。それに対しコストは、書店の取り分が22%として1,100,000円。取次会社(卸し)が8%として400,000円。著者に支払う印税が10%として500,000円。次に固定費が、印刷・製本費1,250,000円。デザイン・DTP(組版)費が400,000円。出版社の経費が1,350,000円。このコスト合計が5,000,000円。差し引きは「0」、つまりは儲けなしということになる。
                同じように3,000部を印刷し、40%が返品になった場合は、細かい数字は省くとして、1,400,000円の損失となることを表を掲げて説明される。
                つまり、5000部つくって、それが全部売れてトントン。3000部つくって40%返品が発生したら、たちまち赤字となる。これが出版業界の現状だという。
                では、なぜやっていけるかというと、委託性のため、本を造っているかぎり、取次から入金があるため。3000部を書店に配本して3ヶ月後に返品が0なら、とりあえず3000部分が入金される。その後、1000部返品になったとすると、次の新刊から相殺される。つまり出版社は、「本」を作り続けるかぎり取次から支払いがあり、何とかやっていけるが、新刊が出なくなった途端につぶれるという「自転車操業」の代表みたいな業種ということになる。

                そのようにして持ちこたえている出版社に、10万部というベストセラーが出た場合。ここではじめて出版社は、37,600,000円という利益を手にすることが出来るという寸法。
                つまり出版社はベストセラーが出ないかぎりやっていけないし、そのベストセラーを狙って、本を作り続けている勝負師のような存在だと言える。そこで田代氏は、電子書籍になったらどうなるのかを説明にかかる。電子書籍だから、紙の本に比べ値段は安く設定しなければならない。ここでは750円の電子書籍が5000部売れたと仮定している。すると売上げは、3,750,000円。これに対しコストは、配信・決済料に30%、1,125,000円。著者に支払う印税、売上げの10%を支払うとして375,000円。デザイン・DTP費が、400,000円。出版社の経費が1,350,000円。コストの合計が、3,250,000円。つまり500,000円の利益が出ることになる。
                ところが、アマゾンであるとか、アップル(iPad)で、著者が直接販売したとすると、著者に70%の販売印税が出ることになる。出版社としては、今までの印税とは違い、販売印税として著者への支払いを増やして原稿を書いてもらわざるを得なくなる。しかし、そうすると販売価格をあげざるを得ない。価格を1,000円として5,000部が売れたとした場合、コストを見ると、配信決済料が30%で1,500,000円。著者の販売印税を35%まで上げて1,750,000円。デザイン・DTP費が400,000円。経費が1,350,000として利益は0。
                しかし販売価格が、紙と電子書籍と同じというのは考えられない。そのためには、デザイン・DTP費や経費などの固定費を下げていかなければならない。しかも、これら数字は5,000部が売れた場合である。
                電子書籍らしい妥当な定価450円とした場合、3,000部が売れても130万円近い赤字となる。そこでデザイン・DTP費や経費などの固定費を極端に下げて、はじめて何万円かの利益が出てくるという寸法だ。
                最後に、現実的な意味での電子出版の「コストと売上げ」例を、田代さんの「電子書籍元年」から掲載しておく。

                  【例1】
                  単価 450円/販売部数 1,000部/売上げ 400,000円
                    配信・決済料30% 135,000円
                    著者へ販売印税35% 157,500円
                    デザイン・DTP費(固定費) 20,000円
                    出版社経費(固定費) 50,000円   合計 362,500円
                 
                 ◇差し引き 87,500円の利益◇

                  【例2】
                  単価 600円/販売部数 500部/売上げ 300,000円
                    配信・決済料30% 90,000円
                    著者へ販売印税35% 105,000円
                    デザイン・DTP費(固定費) 100,000円
                    出版社経費(固定費) 50,000円   合計 345,000円
                 
                 ◇差し引き ▲45,500円の赤字◇


                田代真人さんこのようにビジネスとして考えた場合、出版というものは、たとえ電子出版となっても、かなり厳しいものになる。「しかし、電子出版にはニーズがあります。ニーズがあるからには必ずビジネスになるはずです」と、田代氏はセッションを締めくくられた。

                聞いていて思ったのは、「利益を追求するだけなら、出版には手を出さない方が賢明だろう」ということ。出版業に携わっている人たちは、ビジネスだけでなく、何かプラスアルファがあって、この仕事をやっているのだと思う。もちろん、続けていくためには、如何に低かろうが利益を生み出す道を見つけ出さなければならない訳だが……。 

                セミナー会場風景_表現のデジタル化.jpg

                DTP Booster014に参加 vol.2「電子出版を理解するための5つのポイント」

                2010.06.25 Friday

                0
                  境祐司さんDTP Booster014の2番手は、境祐司さんの「電子出版を理解するための5つのポイント」であった。事前に頂いたプロフィールによると、境さんは、インストラクショナル・デザイナーとして学校、企業の講座プラン、教育マネジメント、講演、書籍執筆などの活動を行い、2000年に入ってからは情報デザイン関連のオンライン学習実証実験を始めたという。モバイルを活用した新しい学習環境を提案し、専用ネットワークで実験サイトcommon style.を運営。教育デザイナー育成を目的としたフォーラムを立ち上げるため準備中だともいう。
                  教育プロジェクト「デザインの未来」代表として、現在、電子書籍・電子出版に関する有料メールマガジン「週刊イーブックストラテジー」を発行中。また、電子書籍についての記事(読むウェブ 〜本とインタラクション)をgihyo.jpで連載中である。

                  以上が、境さんのざっとしたプロフィール。その境さんが、「電子出版」に関して一番苦労したのは、フォーマットだという。EPUBというのがあると聞いて以来、電子書籍のフォーマットはEPUBが全部カバーしていると錯覚してしまったというのだ。電子書籍といった場合、大きく「書籍」「雑誌」「新聞」「教科書」と分けられるが、当初、これが全部、EPUBでカバーできると錯覚していた。実際、人にも「出来ますよ」ってやってみて真っ青になったという。
                  次いで苦労したのが、ワークフローをどのように構築するかということ。ワークフローを構築しないと、とても大変な作業になってしまう。境さんは、この経験から「フォーマット」と「ワークフローの構築」、この二つが、電子出版を扱うときの重要事項だと思われ、このセミナーでも、この二つをを中心に話をすすめていかれた。
                  セミナーの内容は、多分に技術的、専門的な話となり、しかも30分という短い時間の中で展開され、人文系の私としては、分かったような分からないような、ぼんやりとした理解しか得られなかった。
                  そんな状態で、他人様に伝えることなど、危険きわまりない。そこで、以下は頂いたレジメを紹介し、境さんがセミナーで使われた100枚を超える画像(主催者が提供してくださった)と、我がICレコーダーで収録した音声を参照してもらうことにした。ただし音声は、会場で拾った音でエコーがかかったような状態で聞き辛いと思う。また画像のPDFは26mbを超えており、重いとは思うが、その点はご容赦願う次第。

                  ◇まずは、レジメの紹介◇

                  1. 電子書籍フォーマット
                   ・書籍、雑誌、新聞、教科書などの各々のフォーマットについて
                   ・出力フォーマットと中間フォーマット
                   ・EPUB、PDF、Mobi、AZW、.Book、XMDFなどは出力フォーマット
                   ・中間データを採用せず直接出力するとマルチフォーマット対応にコストがかかる
                   ・EPUBは文字主体の欧文の本に適したフォーマット
                   ・EPUBの次期バージョン
                   ・10年後も読めるフォーマット、アップデートされないと読めなくなるフォーマット

                   2. 電子書籍リーダー
                   ・読書専用端末の特長
                   ・読書端末として利用できる汎用デバイス(スマートフォンやiPadなどのスレートデバイス)
                   ・リーダーアプリケーション

                   3. 電子書籍プラットフォーム
                   ・グローバルプラットフォーム(世界市場)App Store、Kibdle Storeなど
                   ・ローカルプラットフォーム(国内市場)

                   4. 電子出版ワークフロー
                   ・リフロー系の動的な電子書籍(さまざまなデバイスに最適化される電子書籍)
                   ・画像系の静的な電子書籍(ページを画像として扱う電子書籍)
                   ・リフロー系は(レイアウトが消滅しても問題のない)文字主体の本に適している
                   ・画像系は、レイアウトをそのまま表現したい本や雑誌に適している
                   ・アプリ系の電子書籍(映像やインタラクティブな仕組みなどが搭載された電子書籍)
                   ・事例(ワークフローの流れ):リフロー系の代表的なフォーマット「EPUB」の場合

                   5. 電子出版プロデュース
                   ・電子書籍の情報をどうやって読者に伝えるのか?
                   ・海外のパブリッシャーではソーシャルメディアをどう活用しているか

                  ◇セミナーで用意された画像◇
                  http://uta-book.com/DTP_Booster014/session02_5points.pdf
                   (26.7mb)

                  ◇セミナーの音声◇
                  http://uta-book.com/DTP_Booster014/session02_5points.mp3 (27.9mb)

                  また、これ以降、セッション3〜7までは、制作に関する技術的な内容がほとんどであり、一般的ではないため、次回は、最後の田代真人さんの「成功する電子書籍ビジネス〜ビジネスの立ち位置が天国と地獄を決める〜」を紹介して、DTP Booster014に関する記事は終わろうと思う。

                  DTP Booster014に参加 vol.1「電子出版がやってきた ヤァヤァヤァ!」

                  2010.06.21 Monday

                  0
                    小木昌樹さん01.jpgセミナーの一番手は、電子出版の全体像ということで、毎日コミュニケーションズの編集長小木昌樹さんが「電子出版がやってきた ヤァヤァヤァ!」と題して話された。
                    小木さんは、90年代初めの美術雑誌編集者時代にDTPと出会い、1999年に『DTPWORLD』編集長に就任。その後、2006年に(株)毎日コミュニケーションズより『+DESIGNING』を創刊し、編集長となった。
                    開口一番、「今日は出版関係、編集関係の方が大勢お見えなので、この数字は御存じなのだと思うのですが……」と断ったうえで、出版売上高の推移をグラフ化したものが提示された。

                    DTP_BoosTer出版売上高の推移.jpg

                    黄色の線が書籍、青が雑誌、紫がその合計値というわけ。1996年から2009年にかけてのデータだが、1996年をピークに売り上げはどんどん下がり続け、2009年の合計値が1兆9356億円 と2兆を割っている。これは21年ぶりの数字、つまり出版業界が21年前の状態に戻ったということになる。

                    DTP_BoosTer発行部数の推移.jpg

                    続いて発行点数・部数の推移が表示される。黄色い線が書籍の出版点数を表しており、蒼い線は雑誌の発行点数、紫の線は、その雑誌の発行部数を表している。これは1996年から2009年までのデータで、1995年時点を「100」とした場合、書籍は2009年時点で「125」と、25%も出版点数が増えている。
                    書籍に関して言えば、出版点数は増えているのに、売上高は下がっている。つまり一点当たりの売上高が低下しているということになるわけです。雑誌も発行点数は増えているのに部数は落ちている。つまり一誌あたりの部数はめちゃくちゃ落ちていることになります。
                    出版というのは元々「他品種少部数」のビジネスモデルなわけです(何万部というベストセラーは別ですが……)。その業界が、今、出版点数は増えているのに、売り上げは極端な落ち込みを見せている。それが、出版業界の今の状況ということになります。
                    もう一つ、雑誌ビジネスで大きなウエイトを占める広告も、今非常に厳しい状況にきている。2009年は雑誌広告の売り上げが3,034億円ですが、2008年は4,000億円ぐらいあったわけですから、実は25%ぐらいも一気に落ちている。
                    このような状況で、出版社の経営はますます厳しくなっている。つまり、これまでの出版ビジネスは崩壊の危機に瀕しているということが言えると思います。

                    話は飛びますが、出版業界は、この20年ぐらいで大きな変革期が一つありました。一つは1990年頃から始まったDTP――デスクトップパブリッシングです。この頃からDTPは全盛期を迎えます。これが出版の第一の変革期になります。
                    では何が変わったかというと、ひとつはパソコンを使ったデザイン。次いで組み版の過程が活字による組み版からコンピュータ組み版に変わった。さらには写真がデジタル化し、入稿や校正の通信化がおこった。つまり製作工程でのデジタル化、あくまでも作る側のデジタル化ということであって、書店や読者までを包み込んだ変革ではなかった。いわば読者不在の変革。
                    これに対し、2010年になって急速に電子出版という話が起こってきた。
                    出版におけるステクホルダー左図は、出版におけるステークホルダーを図表化したものだが、出版社は著者からコンテンツをもらい、それを本という形にして、取り次ぎを経て書店に流し読者へ届ける。これが出版の今までの形、生態系といえる。
                    ところが電子出版になったら、この生態系がガランと変わってしまう。まさにこのことを象徴しているのが、今週ニュースになった作家・瀬名秀明さんの事例だ。彼は、自分たちグループで電子書籍「AIR(エアー)」を製作し、直接Appstoreで販売を開始してしまった。これは取り次ぎも書店も、出版社すら通さない。まさに自分たちでコンテンツをつくって、アプリ化してAppstoreで販売し読者と直結するという形を実験的に始めてしまったのだ。
                    これがビジネスになるかどうかは別として、電子書籍は、やろうと思えばここまでできるという可能性を示したといえる。コンテンツを持っている人が読者と直結できる、これが電子出版の本質といえる。
                    では、出版社や取次店、書店、印刷会社は、これとどう関わっていくのか、真剣に考えていかないと、とんでもないことになっていくだろうと思う。では我々出版に関わる者は何をすべきか……答えはまだ出ていないが、一つ言えるのは、ただ単に紙の置き換えじゃダメなんだということ。電子になったらなったなりの、新たな体験を読者に与えられるものでないとダメだと思う、それができるかできないかが、一つの鍵だと僕は思います。

                    以上が、小木さんの講演の要約です。次回は、境祐司さんの「電子出版を理解するための5つのポイント」を復習してみることにします。

                    DTP Booster014に参加 vol.0 初めての漫画喫茶

                    2010.06.20 Sunday

                    0
                      DTP Booster014に参加するため、夜行バス「大和号」で、2010年6月18日(金)21時50分、近鉄高田駅を出発、翌19日(土)午前7時、新宿高速バスセンターに到着した。
                      DTP Booster014は、ベルサール神田で12時30分に開始される。
                      タイムスケジュールは以下の通り。

                      12:30 オープニング
                      12:35 「電子出版がやってきたヤァヤァヤァ!」/小木昌樹
                      12:55 「電子出版を理解するための5つのポイント」/境祐司
                      13:40 「WoodWing プラグイン」/Joel Ingulsrud
                      14:30 「ProBridgeDesigner-i」/宮本弘
                      15:20 「アドビDidital Publishing PlatformとWIREDアプリ」/岩本崇
                      15:45 「InDesignから書き出すEPUBをコントロールする」/森裕司
                      17:00 「新しいメディアの開拓〜PhotoJ.創刊のプロセスと今後の発展〜」/黒須信宏
                      17:40 「成功する電子書籍ビジネス/ビジネスの立ち位置が天国と地獄を決める」
                                 /田代真人 
                      18:20 クロージング

                      主催は、DTP Booster実行委員会(日刊デジタルクリエーターズ、デジタルハリウッド、DTPTransit)ということなので、抽象的な話でなく、制作現場からの技術論に偏ったものになるだろうなと想像はしていた。しかし、それはそれで興味深かったし、アドビ社からの生々しい情報も記憶に残る。そこで、これから8回にわたって、それぞれのパネラーから提示されたテーマを、自分の復習のためにもブログという形で反芻しておくことにする。
                      まず第1回は、小木昌樹氏の「電子出版がやってきたヤァヤァヤァ!」について復習しておくことにするが、その前に60過ぎのオジンの珍しい体験を紹介させてほしい。
                      というのは、会場のオープンは11時50分。最寄り駅「JR神田」から会場までは歩いて10分程度だという。ならば、それまでの約3時間半をどうするか、書店を回るにも10時からしか開いていないし……。
                      そこで、あらかじめ娘から情報収集していた「漫画喫茶マンボー」新宿本店に向かうことにした。シャワーも使えて、飲み物もフリー、部屋も個室で、パソコンもテレビも揃っているという。しかも1時間200円ぐらいだという。60過ぎての社会勉強としても面白そう。ぜひ行ってみようということになった。

                      漫画喫茶マンボー新宿総本店05説明入り.jpg

                      漫画喫茶個室の中は?.jpg折からの雨の中、新宿バスターミナルから歩いて10分あまりで問題の漫画喫茶に到着した。ただ料金は、土・日・休日料金で、3時間コースと5時間コースしかないという。
                      3時間コースを選び、禁煙室か喫煙室かを選ぶ。もちろん禁煙室を選び、部屋番号を提示され、精算書を持って部屋へ行く。
                      まずは部屋に荷物を下ろして、施設の見学。B1が受付とホールになっており、ここに飲み物の機械や、貸し出し用のDVD、雑誌などがある。部屋はB2にある。蟻の巣のような迷路状の廊下の両端は、ぎっしりと漫画本が埋め尽くしている。その書棚の間に各部屋があるといった感じだ。
                      部屋にはいると、奥行きは160センチぐらい、僕の身長はは165センチだが、斜めになって寝ころべるといった感じ。奥にパソコンとテレビが置かれ、インターネットでの調べものや、テレビを観たり、B1でDVDを借りてきて観ることもできる(無料)。そのほかの調度品としては、小さなカガミとゴミ入れ、それに体にフィットするソファーがある。このソファーは無印良品の店で見つけて欲しかったのだが、高額なのと場所をとるという理由で購入をあきらめた品だ。

                      漫画喫茶マンボー新宿総本店06ロビー.jpg
                         (B1のホール、右側は飲み物の機械類で、左側に一部見えているのはコピー機)

                      ところで、漫画喫茶に荷物を下ろし落ち着いてみると、重大な忘れ物が複数あることを発見した。
                      まずは「老眼鏡」、次いで「ボイスレコーダー」、「メモ用の筆記具とノート」、極めつけが「携帯電話」といった次第。ゆっくりと休んでいる場合ではない。10時には店が開くだろうから、必要なものをそろえなければならない。携帯電話は連絡が取れないだけだから、これは考えない。ボイスレコーダー、これはセミナーの音声情報をを収録しておくのに必須。ここへ来る途中、ビッグカメラを見かけたので、そこで調達すればいいだろう。今使っているボイスレコーダーも調子がよくないので、この際、買い換えよう。問題は老眼鏡、これがなければお手上げ状態。とりあえずは100円ショップで間に合うのだが、地理不案内の東京で、どこにいけば100円ショップがあるのか……。
                      問題はすぐ解決した。ビッグカメラでボイスレコーダー購入の際、西部新宿駅の駅ビルにあることを教えてもらった。早速行ってみるが、駅ビルのショッピングモール全体が11時オープン。 現在時間は10時40分。ならば近くの吉野屋で朝食・昼食を兼ねたブランチとしゃれこみ、その後、11時に100円ショップがオープンするなり、老眼鏡をゲットする。後はJRで神田へと向かうばかり。
                      神田到着は11時40分、途中、コンビニでノートと筆記具をゲットし、11時50分、オープンしたばかりの会場へ到着した。受付で受講料8000円を支払い、会場の前のほうに席を確保する。後は12時30分のセミナー開始を待つばかりとはなった。
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